Rich Gibson & Schuyler Erle著 武舎広幸+福地太郎+武舎るみ訳 GOOGLE MAPS HACKSTM

訳者まえがき

2006年の初めのことでした。当時はGoogle Mapsの地図を利用するだけだった私に、オライリー・ジャパンからこの本の原書がPDFで送られきました。Google MapsのAPIが公開されているという話は聞いていましたが、まだ触ったことはありませんでした。

読み進みながら色々な例を試していくと、これがメチャクチャ楽しいのです。マーカーを立てたり、皇居一周の線を描いて距離を測ったり、地図と写真を合体させたスライドショーを作ったり、と試しているうちにどんどん時間が過ぎていってしまいました。地図はタダ見ているだけでも面白いですが、それをいじくるのはもっともっと楽しいのです。

プログラミングの勉強にもピッタリの題材でしょう。JavaScriptの基本を身に付けた方が、次の段階に進むための応用力をつけるのに、最適だと思います。Googleが機能豊富なAPI(ライブラリ)を提供してくれているので、ちょっぴりコードを書けば、その結果が、美しい地図や写真としてフィードバックされるのですから、こたえられません。

「面白いので翻訳しましょうよ」と推薦のメールを送ったところ、無事出版が決まり、翻訳作業を開始しました。

ところが、翻訳作業も残りわずかというところで、大問題が発生したました。なんとGoogleが新バージョンのAPI(バージョン2)を公開したのです。チェックしてみると、バージョン2のAPIを利用すると動かない例がゴロゴロでてきます。この段階でバージョン1の解説書を出しても意味がありません。相談の結果、出版を延期して、バージョン2に対応した内容に変更することになりました。第1版を出さずに、いきなり第2版を出すようなことになったのです。

動かない例はできるだけバージョン2でも動くようにプログラムを変更し、うまくいかないものは原則として削除することにしました。削除しただけでは面白くありませんので、これを機に、原著には欠けていたAPIの基本を解説するHackを書き下ろしで追加することにしました。これらのHackは、いわば「穴埋め」だったのですが、かえって内容的なバランスはよくなり、プログラミングの初級者にも取っつきやすい本になったのではないかと思います。

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おかげさまで、難産の末、2006年7月に発売された第1版は順調な売れ行きです。一方で、Google Mapsのバージョンアップは続いています。最新情報はサポートページで随時公開してはいるものの、1年も経過すると、現状に合わない箇所があちらこちらに出てきてしまいました。そこで、もう一度全面的な見直し作業を行い、改訂版(第3版?)をお届けすることにしました。

約20の新Hackを追加し、約15のHackについては、既存のAPIの機能強化やGoogle Mapsの動作の変更などを反映するために大幅な改訂を行いました。新規に追加されたHackの多くは、初版以降に加わったAPI機能に関するもので、応用例とともに機能を説明しています。また、残りのほとんどのHackについても、図の更新などの改訂を行いました。

今回の改訂作業の結果、原著のHackが原形をとどめているものは、指を折って数えられるほどしかなくなってしまいましたが、その精神はしっかりと受け継いだつもりです。この本で、地図をいじくることの楽しさを多くの皆さんが体験してくださることを願っています。

あなたも、プログラマーだけに許された至福の時を過ごされてみてはいかがでしょうか。


この本の初版以来お世話になっている株式会社オライリー・ジャパンの宮川直樹さんには、この本をご紹介してくださったこと、コロコロと変わる私の意見に耳を傾けてくださって、構成に関する希望を叶えてくださったことに深く感謝いたします。また、宮川さんと私をつないでくださった株式会社チューリングの鈴木光治さんには、Hackが合併したり移動したりする複雑な改訂作業だったにもかかわらず、ていねいな編集をしていただきました。この場をお借りして感謝いたします。

2007年9月
訳者代表 武舎広幸

 

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