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英日翻訳講座 翻訳ダンベル
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第145問 翻訳技術に関する問題

次の英文とその訳文を読み、訳文で修正した方がよいと思う箇所を下の選択肢から選んでください。

This weekend offers a great opportunity to learn more about pioneer life in Florida as it was lived at the time of Civil War.
(http://civilwarflorida.blogspot.com/2009/05/57th-annual-florida-folk-festival-is.html)
今週末、フロリダにおける内戦時代の開拓者生活について学ぶすばらしい機会があります。

a. 「今週末」を「今週の週末」に直す
b. 「内戦」を「南北戦争」に直す
c. 「開拓者生活」を「開拓者の生活」に直す
d. 「機会があります」を「機会が提供されます」に直す

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解答・解説

正解はb.の「『内戦』を『南北戦争』に直す」です。

「当たり前じゃないか。何でこんな問題を出すんだ」と思われた方は、学生時代世界史をきちんと勉強なさった方でしょう。しかし、残念ながら翻訳課題の添削などをしていると、かなりの方が「世界大恐慌」や「南北戦争」といった超有名な出来事の訳語を間違っていらっしゃるのです。

学生時代、英語は大好きだったけれども、世界史は大の苦手だったというあなた。(残念ながら)翻訳には世界史の知識も欠かせないのです。 いや、そもそも翻訳に「不要な知識」というものは存在しないのです。スポーツ(野球、サッカー、アメリカンフットボール、バスケット、アイスホッケー、……)、映画、音楽(ジャズ、ヒップホップ、カントリー、クラシック、……)政治、経済、歴史、ヨガ、瞑想、……。たとえ、コンピュータに関する本を訳しているとしても、著者が関心を持っていることならば何でも登場する可能性があるのです。逆に言えば、「何が役に立つかわからない」のが翻訳のひとつの面白さだとも言えるでしょう。

さて、civil warがピンとこなかった方のために、詳しくご説明しましょう。インターネットのMerriam-Webster Onlineで調べてみると、たしかにcivil warはa war between opposing groups of citizens of the same countryという意味で、これなら「内戦」と訳せます。しかし、原文にpioneer life in Floridaとあり、その文脈を考え合わせると「内戦」では正しい訳語とは言えません。Floridaはアメリカであり、アメリカでのcivil warは「南北戦争」なのですから。

civil warには、このほか英国の「清教徒革命(1638-1660)」やスペインの「スペイン内戦(1936-1939)」もありますから、文脈を考慮しないで辞書の訳語をそのまま使うと誤解を招くおかしな訳になる恐れがあります。

このように、歴史的な出来事にはたいてい「定訳」というものがありますから、それをしっかり理解した上で訳さないと「ふん、この訳者、こんな常識的なことも知らないのか」と笑われかねません。英語の新聞雑誌では歴史的な出来事や名称を引用したりもじったりしてタイトルやサブタイトル、キャプションを書くことが少なくありません。それを訳す場合、もとになった出来事や名称について詳しく知らなければ、調べて自分なりに理解、納得した上で訳しましょう。また、日頃から欧米の歴史について楽しみながら勉強しておく必要もあります。

最後に、そのほかの選択肢について検討しておきましょう。a.の「今週の週末」は「今週」の「週」と「週末」の「週」とが重複していますから、かえって直さない方がよいでしょう(あるいは「この週末」としてもよいかもしれません)。

c.の「開拓者の生活」は、「内戦時代の開拓者の生活」という具合に「の」が繰り返されるようになるため、「開拓者生活」とした方が簡潔かなという印象がありますが、まあ、「の」が2つ続くくらいなら許容範囲ですから、「開拓者生活」でも「開拓者の生活」でもよいでしょう。

d.の「機会が提供されます」は受け身で、この場合は日本語表現としてはかえって持って回ったような印象を受けますから、むしろ直さない方がよいと思います。

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