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カンフーマック ── 猛獣を飼い慣らす310の技    キア・トーマス著    武舎広幸訳

訳者まえがき

 この本のことを初めて知ったのは原書の出版社であるPragmatic Bookshelfからのメルマガでした。本の概要を読むと、マッキントッシュ(マック)を使うためのワザ(tip)を集めた本のようです。この種の本は10年ほど前まではよく見かけたのですが、最近はあまり見かなくなりました。

 そういった本の多くに載っているワザは、初心者向けで何年もマックを使っているような人は知っているものばかりだったり、システムの細部をいじってしまうためOSのバージョンアップなどがあると使えなくなってしまったり、といったものが多かったのです。中には、システムの設定をおかしくしてしまってうまくマックが動かなくなってしまうようなものもありました。

 その一方で、マックの基本ソフト(OS)自体が進化して、必要な機能を普通に使えるようになってきたので、わざわざこういった本に頼る必要も少なくなったということも、ワザを集めた本がほとんど出版されなくなった原因でしょう。

「今さら、マックのtip集を出してもなあ~」と、あまりきちんと内容も読まず翻訳する本の候補からは外してしまいました。

 ところが、しばらくすると、オライリー・ジャパンの方からこの本を読んでみてほしいというお話がやってきました。出版社からのお話ならば無視するわけにもいかず、「まあ、読んでみるか」と本文を読み始めました。

 読み始めてビックリ。マックを使い始めてもう25年、マックに関する本を何冊も訳し、一応「ベテランマックユーザ」のつもりでいた私が知らないワザ、それもとても役に立つワザがたくさん載っているではありませんか。おもしろくて止まらなくなってしまいました(村上春樹の『1Q84』以来の熱中ぶりでした!)。多くのベテランユーザも、同じ感想をもたれるのではないかと思います。

 この本について、とてもよいと思うことは、ほとんどのワザについてどうすれば元に戻るのかが書いてあることです。後半の章にはシステムの設定を変更するワザがたくさん登場しますが、気にいらなければ説明に従って元に戻すことが簡単にできます(ごく一部それが不可能なものもありますが、そういったものにはその旨が明示されています)。ですから、安心していろいろなワザを試すことができます。

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 英語版(原書)と日本語版の違いについてまとめておきます。英語版は、300を超えるすべてのワザが、(ナント)ひとつの章にまとまっていて、まったく分類されずに並んでいました。しかし、分類されていたほうが読みやすく、あとで参照しやすいだろうということですべてのワザを分類して複数の章にわけることにしました。分類して欲しいと思う人の割合は、日本人のほうが欧米人に比べてかなり高いのではないかとも考えました。昨年夏、急逝されてしまった先輩翻訳家の山岡洋一氏は「原著者が日本人だったらこう表現するだろうという訳文にするのが翻訳だ」とおっしゃっていましたが、原著者のKeir Thomas氏が日本人だったら、きっとすべてのワザを分類してから出版したのではないかと思うのです。

 英語版は、10.7(Lion ── ライオン)を対象としていましたが、10.7からはPowerPC(パワーピーシー)用のアプリケーション(アプリ)が動かなくなってしまったりということで、まだ10.6(Snow Leopard ── スノーレパード)を使っていらっしゃる利用者も多そうですし、翻訳の途中で10.8(Mountain Lion ── マウンテンライオン)が発表されてしまったということもあり、10.6から10.8まで動作を確認することにしました。この素晴らしい本を「10.7専用」としてしまうのはあまりにもったいないというのがその大きな理由です。もうひとつついでに、「10.9以降でも使えそう」マークも付けることにしました。10.6から10.8までの状況からして、「突然動かなくなることはなさそうだ」という訳者の予想です。10.9(あるいは「iOS for Mac」でしょうか)が公開された暁には、サポートページで訳者の予想が当たったかを公開したいと思っています。

 日本語版では、ワザをすべて分類して並び替える際に、初心者の方にも使いやすい、OS Xに最初から付属しているアプリに関するワザを最初のほうにまとめました。このため、パソコンでネット検索をしたことのある人ならば十分読みこなせるようになったのではないかと思います。前提となる知識を補うために、原著の冒頭にあった用語等の説明に、初心者向けの説明を加え付録Aとしてまとめました。また、付録Bには10.8でOS Xとの統合がだいぶ進んだiCloudの機能についての解説を加えました。これを読んでいただければマックとiCloudがどのような関係にあるのかおわかりいただけるのではないかと思います。なお、本文には動作確認作業の途中で気がついた、読者の皆さんのお役に立ちそうな情報も少し加えてあります。

 翻訳作業中に10.8(Mountain Lion)が発表され、翻訳作業が終わる頃に正式版が公開されましたが、10.7で動いていたワザのほとんどが10.8でも動作しました。おそらく「10.9」でも同様ではないかと思います。

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 この本を読み出してから、Spotlight(スポットライト)とかMission Control(ミッションコントロール)などを特によく使うようになりました。今まで買ってはあったものの、宝の持ち腐れ状態だった外付けのトラックパッドも、これなしでは過ごせないほど便利に使っています。

 この本のお陰で、マックを使うのが以前にも増して快適に、そして楽しくなりました。皆さんにも同じように感じていただければ幸いです。

2012年9月
マーリンアームズ株式会社 武舎広幸

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