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英日翻訳 基礎演習講座

Lesson 3 数量表現

第1回の翻訳課題は難しかったでしょうか。このTextbook 2でも,原文の世界を再現するためにはどのような点に注意する必要があるのか,具体例を見ながら学んでいきます。Lesson 3では数量表現を取り上げます。

STEP 1 度量衡の単位の変換

度量衡,金額,日付,人数など,数量表現は,新聞記事,小説,コンピューターのマニュアルほか,ジャンルを問わずあらゆる分野で登場します。数字の誤りは,だれがどう見ても明白に誤りであるため,翻訳者の資質が疑われがちです。数量表現に限りません。人間はまちがえるもの。おっちょこちょいな人だろうが,そうでない人であろうが,どこかまちがっているはずだという前提のもとに,訳し終えた文書を何度でも見直しましょう。ひとつの数字をまちがえたために,文全体の意味がまったく変わってしまうこともあるのです。

正確であることはもちろんですが,訳文の読者が原文の読者と同じ印象を得られる表現を探求するのも重要です。 インチ,マイル,ガロンなど普通の日本人にはなじみのない単位を使った表現は,「ピンと来る」表現に変えなければ,原文が描き出す世界を再現することはできません。

まず例を見てみましょう。

"How high was it?" "About three feet high."
訳例1
「高さはどのぐらいだった?」
「三フィートほどだった」
訳例2
「高さはどのぐらいだった?」
「九十センチほどだった」

大原則3 度量衡は換算する

度量衡は換算するのが原則です。「三フィート」がどのくらいの長さなのか,すぐにピンと来る日本人は多くありません。頭の中で「1フィートは約30センチだから3倍で約90センチか」と計算をすることになります。余計な計算をさせられるだけでその文書に対する印象は変わってしまいます。「華氏50度」と書いてあっても,日本の一般の読者にはいったいどれぐらいの温度なのか,とっさには見当がつきません。華氏から摂氏に換算する式は次のとおりですから、これで計算すれば華氏50度は摂氏10度になります。気温が摂氏10度と聞けば,経験上,暖かい冬の日程度だとわかります。

℃ = (°F-32)÷1.8

このように,度量衡や温度などの数値と単位は,私たちが普段使っているものにできるだけ換算する必要があります。そのほうがイメージが描きやすい,わかりやすい,余計な雑音が入らない,つまり,読者に親切なのです。

数値の表記法は,対象の文書によってさまざまです。上の例文のように小説ならば,縦書きになりますから通常漢数字を使うことになります。「九〇センチ」とするか「九十センチ」とするかなど細かい所は,本を訳す場合ならば自分で,あるいは編集者と相談して決めることになるでしょう。実務翻訳(産業翻訳)では,横書きの文書がほとんどです。その場合,算用数字を使うのが普通ですが,基本的には依頼先の指定に従うことになります。この講座では特に指定がない限り,算用数字を用いることにします。

訳してみましょう

原文の情報
ジャンル ノンフィクション
翻訳時の注意 第二次大戦中に香港で日本軍の捕虜となり,船で日本に輸送され,川崎の造船所で強制労働をさせられたカナダ人画家の回想録。引用部分は,祖国へ帰る日を恋いこがれる捕虜たちの心境。
この講座では便宜上,横書きにしていますが,出版翻訳系の原稿ですから,数字は漢数字で書いてください。

The supper. Roll call. Fifteen minutes to lights out. And so to sleep. Lying on our thirty-seven inches1) of matting in the dark, each to his own thoughts. This was the best and worst time of day. No chores, no action, time just to rest. And think. Yes, thought could be avoided throughout the busy day but not now. The pulse of the brain still throbbed. It came alive, exerting its own subtle torture. The thoughts of five hundred men rose in the darkness, circling, swelling the air, enmeshed.

(Where Life and Death Hold Hands by William Allister)

語句

roll call
点呼
lights out
消灯時刻
matting
chore
雑用,いやな仕事
throb
脈打つ
exert
加える,及ぼす
torture
責め苦を与えること,拷問
swell
ふくらませる
enmesh
〜をからませる,巻き込む

あなたの訳

 

訳例

夕食。点呼。消灯までの十五分間。そして就寝。暗闇の中で,幅一メートル弱の畳の上に横になり,めいめいが物思いに沈む。それは,一日のうちで最良の時であると同時に最悪の時でもあった。単調な作業もない。やることはなにもない。ただ休み,考えるだけの時間。忙しい日中は,なににせよ考えている余裕などまったくないが,いまはちがう。脳だけはまださかんに働きつづけている。いや,昼間よりかえって活発になり,名状したがい責め苦をもたらす。五百人の男の思いが暗闇へと立ち昇り,うずまき,ふくれあがり,もつれあう。

(ウィリアム・アリスター著 丙栞訳『キャンプ -- 日本軍の捕虜になった男』朔北社 )

解説

  1. 上であげた温度の例と同様に,thirty-seven inchesを「三十七インチ」と訳しても,日本の読者にはいったいどれぐらいの長さなのか見当もつきません。1インチは2.54センチメートルですから,これで計算すれば93.98cmとなります。 日本人が「90センチちょっと」と聞けば,だいたいの寸法がわかります。訳例では,thirty-seven inchesを「一メートル弱」と訳しました。ここで厳密に「93.98センチメートル」などとやったのでは,かえって文のリズムや流れがおかしくなってしまうでしょう。こっけいにさえなってしまうかもしれません。しかし,これが科学系の論文や解説なら話は別で,特別な場合を除き,正確に計算した数字をきちんと書かなければなりません。時と場合に応じて柔軟に対応しなければならない例のひとつです。

STEP 2 英語独特の数量表現

数量表現にも,英語独特のものがあります。度量衡の場合と同じで,これをそのまま訳したのでは,日本人の読者は「どこか違う」と違和感を抱きます。

Peter has worked really hard for the last eight weeks.
訳例1 この8週間,ピーターは本当に一所懸命働いた。
訳例2 この2ヶ月,ピーターは本当に一所懸命働いた。

「8週間」はeight weeksの訳としてもちろん間違いではありません。しかし,訳例1はなんとなく変ではありませんか? 「2ヶ月」というほうが自然でしょう。単なる英文和訳を脱するためには,こういう「日本人としての感覚」や「日本語独特のならわし」を活かした訳文を書くことが大切です。

別の例を見てみましょう。

I tried to quit smoking dozens of times.
訳例1 私は何ダース回もタバコをやめようとした。
訳例2 私は何十回もタバコをやめようとした。
訳例3 私は何度も何度もタバコをやめようとした。

訳例1のように「何ダース回」というのは変だというのは,さすがにほとんどの人が感じるでしょう。「ダースがたくさんある」わけですから,訳例2のように「何十回も」とか訳例3のように「何度も何度も」などといった表現に置き換えましょう。

次のような例では,日本語でも「ダース」を使ってもおかしくありません。

I bought half a dozen pencils.
訳例1 鉛筆を半ダース買った。

次のような例はどうでしょう。この文に登場するUSB devicesはパソコンに付いている,USB(Universal Serial Bus)という規格に準拠した周辺機器のことを指します(パソコン本体の前後あるいは横などにある穴に「USBケーブル」を差して周辺機器とパソコン本体をつないで使います)。訳語としては「USB機器」あるいは「USBデバイス」となります。driverは,この場合USB機器を使えるようにするためのプログラムを意味します。訳語としては「ドライバー」あるいは「ドライバ」でよいでしょう。

I wrote half a dozen drivers for USB devices.
訳例1 私はUSB機器用に半ダースのドライバーを書いた。
訳例2 USB機器用のドライバーを6つ書いた。
訳例3 USB機器用のドライバーを6本作った。

鉛筆ならば半ダースでもおかしくないのですが,日本語で筆記用具以外でダースを使うケースは思い浮かびません。にも関わらず訳例1のように,原文に引きずられて「ダース」をそのまま使ってしまった訳文を時々見かけます。「半ダース」という表現を使う前に,自分がこの場面で「半ダースの〜」と言うかどうか頭の中で必ず確認してください。

訳例2ではwroteを「6つ書いた」とし,訳例3では「6本作った」としています。どちらでも大丈夫ですが,訳例3のような表現は「ドライバー」がプログラムであること,また「プログラムを作る」と言う表現が一般的であること,を知らないと使えない表現です。

日本語では「プログラムを6書いた」では変で,数字の後に「助数詞」が必要ですが,プログラムならば「6つのプログラム」「6本のプログラム」と言った表現が使われます。「6つ」だとフォーマルな文章には少し合わない感じがしますし,「6本」だとちょっとマニアックな(というか技術者的なオタクっぽい)雰囲気が少し出てきてしまうような気もします。技術者向けの文章である可能性が高いことを考えると訳例3の方が,若干ですがよい訳文といえるでしょう。

訳してみましょう

原文の情報
ジャンル 金融(新聞記事)
翻訳時の注意 数字に気をつけて,正確に,かつわかりやすく翻訳してみましょう。

SEC kick-starts mutual fund reform

In an important step toward cleaning up the scandal-tainted mutual fund industry, the Securities and Exchange Commission Wednesday approved a proposal requiring funds to install independent chairmen and boards of directors.

The agency's five-member board voted 3-2 in favor of the regulation1), which not only has been controversial within the $7.5 trillion2) industry but also has divided the SEC.

The regulation, which will take effect in 18 months3), requires that 75 percent of a mutual fund's directors be independent of the company. Directors will have the authority to retain staff to assist them in their duties, and hold meetings once a quarter without management present.

Advocates contend the reform will resolve a long-standing conflict: How can a chairman or director of a mutual fund board, who also is an employee of the mutual fund company, represent investors' interests fairly?

While consumer and investor advocates praised the vote, most agree more reforms are needed and predicted contentious fights ahead as the SEC wrestles with the issues.

"The biggest battles are yet to come," said Mercer Bullard, a former SEC lawyer and president of Fund Democracy, a shareholder advocacy group. "Independent chairman, it probably won't even make my top five list of reforms that I think are needed in the industry."...

(The Japan Times, June 25, 2004)

語句

SEC
(米)証券取引委員会
kick-start
(人に)はっぱをかける
mutual fund
(米)ミューチュアルファンド(投資信託会社)
taint
名誉や評判を傷つける
install
就任させる
chirman of the board
取締役会長
the board of directors
取締役会,重役会
board
委員会
quarter
四半期
yet to do
これから〜する

あなたの訳

 

訳例

投資信託業界の改革をSECが後押し

米証券取引委員会(SEC)は水曜,相次ぐ不祥事の汚辱にまみれた投資信託業界の浄化に向けて,ファンドに対して取締役会と会長職を会社から独立させることを義務づける規制案を承認した。

賛成票を投じたのはSECの委員5人中3人で,これが7兆5千億ドル規模の投資信託業界で物議をかもしているばかりか,SEC内部でも議論を生んでいる。

この規制は1年6ヶ月後に効力を発し,取締役の75パーセントは会社から独立した立場でなければならないとするもの。取締役には,職務を補佐する部下を持つ権限と,経営サイドの立ち会いなしでも各四半期に1回,会議を開く権限とが与えられる。

賛成派は,この改革によって長年の論争にけりがつくと力説する。投資信託会社のお抱え社長や重役が,投資家の利益を守る代表者の役割を公平に果たせるはずがない,という議論である。

消費者や投資家の擁護派は規制案の承認に賛意を示してはいるが,大方の意見は今後もさらなる改革が必要だというもので,この先SECがこの問題に取り組んでいく過程で激しい論争が繰り広げられるだろうと見ている。

SECの顧問弁護士を務めた経歴を持つ,株主擁護団体「ファンド・デモクラシー」のマーサー・ブラード会長は,こう述べている。「本当の闘いはまだまだこれからです。会長職を独立させる措置は,私が投資信託業界に必要だと考えている改革案のリストのトップ5にも入らないでしょう」

解説

  1. the agency's five-member board voted 3-2 in favor of the regulation は,原文を直訳すれば「SECの5人から成る委員会は,賛成3,反対2で規制案を承認した」となりますが,第一段落の内容を受け,日本語としてスムーズにつながる文にするため,訳例のように「賛成票を投じたのはSECの委員5人中3人で」としました。
  2. million,billion,trillionといった大きな数の翻訳は間違いやすいので注意が必要です。慎重に計算し,兆や億など桁数が合っているかどうか見直しをしてください
  3. 前出のeight weeksの例と同様に,18 monthsも英語独特の表現です。何かの理由で18という数字に焦点をあてる必要のある科学記事や経済記事など特殊な例は別として,そのまま「18ヶ月」と訳してしまうよりは「1年半」あるいは「1年6ヶ月」としたほうが,日本人の読者にとっては感覚的にも理解しやすいと思います。間違いではありませんが,ピンと来ないのです。ここは規制が効力を発するまでの正確な期間ですから,「1年半」ではなく「1年6ヶ月」としました。

STEP 3 特定の分野で使われる数量表現

スポーツや科学技術など,特定の分野だけで使われる数字の表現が現れる場合は,その翻訳に特に注意を払う必要があります。ここではスポーツ関連の表現を見てみましょう。

Just 386 yards, this par-four is a birdie possibility.
訳例1 353メートルしかないので,このパー4はバーディの可能性がある。
訳例2 パー4だが386ヤードしかないので,このホールではバーディが狙える。

ゴルフでは,ふつう「ヤード」はそのまま使われています。スポーツ関係の単行本や記事,資料では,得点や統計など,数字が随所に出てきます。さまざまなスポーツに特有の数字や用語,表現もあります。それぞれのスポーツをよく知っていると有利なことは言うまでもありません。

翻訳の仕事を始めると,必ずしも自分の得意分野ではない仕事の依頼が来ることもありますから,常日頃,様々な分野に好奇心をもって接し,勉強したり趣味にしたりしていると,引き受けられる仕事の幅も自然に広がってくるでしょう。そのほか,たとえばゴルフにあまり興味のない人なら,例題のような仕事が来た場合にそなえて,ゴルフのことを詳しく教えてくれそうな友人知人に,あらかじめアドバイスを頼んでおくのもひとつの手です。

訳してみましょう

原文の情報
ジャンル 新聞記事(スポーツ,野球)
翻訳時の注意 新聞記事ですので「である調」にします。新聞や雑誌の記事は,インタビューなど会話調が自然な個所を除けば,すべて「である調」で訳します。日本の新聞も「である調」だからです。また,例題は野球に関する文章ですので,野球独特の言い回しを使う必要もあります。
背景 例題は英字新聞 The Japan Times のオンライン版から採った野球記事です。野球ファンなら資料などいらない簡単な課題かもしれませんが,それほど詳しくない人は,まずこの記事について役立ちそうな資料を集めましょう。てっとりばやく入手でき,しかもごく新しい情報まで調べられるのが,もちろんインターネットです。筆者の場合,Googleで「グリフィー」と入力して検索し,メジャーリーグのホームページ Major.jp,gooニュースのスポーツトピック,NIKKEI NET のスポーツニュース,スポニチアネックスのUSA速報などで,グリフィー500号本塁打達成の記事を集めて,翻訳の参考にしました。 インターネットが登場する前は,いざというときの役に立てようと,スポーツ用語辞典だの解剖関係の入門書だの栄養素の資料だのルールブックだの選手名鑑だの,さまざまな資料を見つけたときに買い求め,大きな本棚にぎっしり詰め込んでいた翻訳者が多かったのではないでしょうか。しかし,インターネットでそれこそ千差万別な分野の最新情報が手軽に入手できるようになってからというもの,そうした紙の資料は以前ほどは必要ではなくなりました。

Griffey Jr. belts historic 500th homer Gives Griffey Sr. perfect father's day gift with sixth-inning blast1)

Ken Griffey Jr. erased the disappointment and doubt that consumed the past few years of his career with one sweet swing into baseball history.

"Never in my wildest dreams did I think I'd ever accomplish this," Griffey said Sunday after becoming the 20th player to hit 500 home runs.

"All the aches and pains I've had this year were gone for like two minutes2). It was awesome."

Griffey smacked a 2-2 fastball from Matt Morris into the right-field stands to lead off the sixth inning in the Cincinnati Reds' 6-0 victory4) in St. Louis.

At 34, Griffey became the sixth-youngest player to reach the milestone. He probably would've gotten it much sooner if he hadn't been sidelined by various injuries the last three seasons. From 2001-03, he played in only 234 games and hit 43 homers........

(The Japan Times Online, June 22, 2004)

語句

belt
[野球用語]かっ飛ばす
blast
猛打,ホームラン
consume
消耗させる
wild
とっぴな,途方もない
awesome
すばらしい,いかす
smack
強打する
right field stand
[野球用語]右翼席
lead off
[野球用語]一番打者を務める
milestone
(個人のキャリアにおける)画期的な出来事
sideline
[野球用語](負傷,事故などが選手を)出場できなくする
homer
ホームラン

あなたの訳

 

訳例

グリフィー,500号本塁打の記録達成
父の日に元大リーガーの父へ最高のプレゼント

シンシナティ・レッズのケン・グリフィー外野手は見事なホームランを放って記録を樹立し,この3年ついてまわった失望や不安を吹き飛ばした。そして,史上20人目の500号達成直後に,こう語った。「こんな記録が出せるなんて,夢にも思いませんでした。打ってからベースを1周してここに戻ってくるまでの間に,この1年の痛みや苦しみが全部吹っ飛んでしまいましたよ。最高です」

敵地ミズーリ州セントルイスでのカージナルス戦の6回,先頭打者として登場したグリフィーはカウント2-2から先発マット・モリスの速球を強振,右翼席へ本塁打を放ち,レッズに6対0の勝利をもたらした。

現在34歳のグリフィーは,史上6番目の若さで500号を達成。過去3シーズンのたび重なる負傷での休養欠場がなければ,もっと早い時期に達成できていたはずの記録である。2001年から2003年までの出場はわずか234試合,本塁打は43本と振るわなかった……

解説

  1. まずはサブタイトルをご覧ください。直訳すると,「6回(表)のホームランで,ジェフリー・シニアに完璧な父の日のプレゼントを贈る」ということになりますが,「ホームラン」は明白ですし,「6回(表)の」まで入れると冗長になってサブタイトルらしくなくなるため,この部分はあえて削りました(それに,6回先頭で本塁打を打ったことは本文第4パラグラフにも出てくるのです)。また,この大記録を父の日のプレゼントとして贈る相手が,元大リーガーであるという情報は(前述のネット各紙で入手した情報ですが),当日の感動を伝えるのに必要だと考え,あえて追加しました。
  2. for like two minutes の like は,会話で you know を連発する若者がよくいますが,それと同様に会話でちょくちょく気軽に差しはさまれる,「〜みたいな」「〜ぐらい」といった感じの言葉です。この場合は「2分ぐらいの間に」の意味。しかし,これをそのまま使ったのでは唐突で,日本の読者は「2分って,いったい何のこと?」と小首をかしげるでしょうから,「あのホームランを打って記録を達成してから,ベースを回っている間の2分間」という意味にかみくだいて訳しました。
  3. 訳例の第1パラグラフの「外野手」と,第2パラグラフの「敵地ミズーリ州」も,読者にわかりやすい親切な文章にするという目的で,あえて追加した情報です。
  4. 原文第4パラグラフの Cincinnati Reds は,訳文ではグリフィー選手を紹介する情報として,本文の文頭に移動し,第4パラグラフでは単に「レッズ」としました。
  5. 訳例の段落数が原文のパラグラフ数と合っていませんね。これは,英文のパラグラフどおりにすると,日本語の文章としては読みにくいものになると思ったからです。そもそも原文をオンライン版から採りましたから,印刷体の英字新聞のようにかっちり活字が組まれているわけではありません。ためしにジャパンタイムズのオンライン版を見ていただければ,行頭をインデントせず,パラグラフとパラグラフの間を1行あけるというラフなスタイルをとっているのがわかるでしょう。それどころか,本来ならひとつのパラグラフになるべき文と文の間を空けていたりして,きちんとしたパラグラフにさえなっていない個所も多く見られます。これをこのままの形で訳しただけでは読みにくく,読者に不親切というもの。訳す際には,訳文になってからの読みやすさ,わかりやすさを第一に考えて柔軟に対応していく必要があるでしょう。

英日翻訳 基礎演習講座
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